社内DXに取り組む私が読んだ本を紹介するブログ

30代男性がDX推進に苦戦する中でヒントを得ようと読んだ本の学びをシェアします。

【書評】USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

訪問いただきありがとうございます!

この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • ビジネスにおける成果の出し方を知りたい
  • 社内文化を変革するヒントを得たい
  • キャリア形成に悩んでいる

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

ビジネスにおける成果の出し方を知りたい

本書では、ビジネスにおいて成果を出すためにはマーケティング思考が必要だと述べられています。

マーケティングとはセールス(=商品を売る)と反対の言葉で、消費者に商品を選んでもらえるようにする活動のことです。そして、商品を選んでもらうためには消費者が何を望んでいるのかを消費者以上に理解する消費者視点が必要なため、マーケティング思考とは消費者視点で考えることと言えます。

これまでの日本の市場環境では、政府に保護された市場で高い技術力を持った企業の製品が選ばれていたため、多くの日本企業はマーケティング力を伸ばす努力をしていませんでした。一方、海外では競争を勝ち抜くためにマーケティング思考が必須だったため、名立たるグローバル企業(著者の古巣であるP&Gなど)は高いマーケティング力を持っています。そして、市場の成熟によって技術力の差は小さくなり、グローバル化によって海外企業との競争を避けられなくなっていることから、日本企業も生き残るためにマーケティング力が必要となっているのです。

そのような環境下で、森岡氏がマーケティング本部長及び、CMO(最高マーケティング責任者)を務めたUSJで、戦略的にマーケティングフレームワークを活用し、顧客視点の仕事を徹底しました。その結果、経営危機に陥っていたUSJをV字回復させ、1か月だけでも商圏人口が3倍以上の東京ディズニーリゾートの集客数を上回ることを可能にしたのです。

ここから何を学んだ?

3つのことを学びました!

失敗の鍵は全員を喜ばせようとすること

商品を買う確率やニーズは消費者によって偏りがあるため、万人受けを目指すと誰に対しても中途半端なものになり、誰からも選ばれなくなってしまう。

社内でもDX推進に積極的なところ消極的なところといったように社員を巻き込めるかどうかの期待値に違いがあったり、DX推進によって利益率を高めることの影響度は部署によって異なる。ターゲットを絞って施策を検討するのも1つかもしれない。

市場構造を逆らった戦略の成功は難しい

市場はメーカーの事情、流通の事情、無数の消費者の事情など様々な事情がぶつかり合って一定のやり方に収まっており、ある種の安定状態になっている。その仕組みに逆らった戦略は、仕組みに沿った戦略と比べて多くのエネルギー(リソース)を必要とするため成功することは難しい。

DX推進を共に進めたい各部署には大なり小なり特有の事情があるはずなので、こちらの事情を一方的に押し付けても、流れに逆らってしまうことになり成功は難しい。全社的に見て良いか悪いかはいったん脇に置いて、理解してする姿勢を持ち、必要であれば変えていくやり方が最初は良いのかもしれない。

消費者が欲しいのはドリルではなく穴

お客さんがUSJに求めているのは「アトラクション」ではなく「感情」。

東京ディズニーリゾートでは「幸せ」、ゲストへの聞き取りでは「ミッキーに会うこと」といった回答が返ってくるが、その結果どうなりたいのか?と繰り返し問うことで、本当に得たいものに辿り着く。ここを適当にしてしまうと誤った訴求をしてしまうことになり失敗する。

社内のDX推進で考えると、「なぜDXに取り組む必要があるのか?」の前に、「なぜこの会社で働くのか?」という問いから始め、DXの達成で求めているものが手に入りますよ、という訴求が必要なのかも?と感じた。

社内文化を変革するヒントを得たい

「消費者の方を向いて仕事をする」のは当たり前のことでは?と思うかもしれませんが、意外と難しいどころか対策無しでは困難だと筆者は述べています。それは、人間は自分の利益を優先する生き物であり、会社全体の利益と個々の従業員の利益は必ずしも一致しないからです。

例えば、A部門とB部門が共同で新メニューを開発している場面で、A部門はカレーを、B部門はすき焼きを提案していたとします。消費者理解の結果、カレーが望まれていることが分かっていたとしてもB部門の人が自己保身に躍起になって譲らなかったり、A部門の人が社内の軋轢を避けるために譲歩するなどして「カレーすき焼き」という落としどころに落ち着きます。これでは消費者の方を向いて仕事をしているとは言えません。この例は極端ですが、顧客の利益よりも個人や組織の利益を優先してしまう場面はあるのでは無いでしょうか?

このような場面でも、マーケターは顧客視点に立って、社内の利害関係をぶった切って関係者を説得して巻き込んでいく姿勢が求められます。そうしている内に、顧客視点の業務遂行が会社の文化になっています。

ここからは何を学んだ?

DX推進にもマーケティング思考は大事だと学んだよ。

社内文化の変革にもマーケティングが有効

日本企業の多くは技術志向に偏り、マーケティング力を軽視してきました。しかし、技術志向で会社を発展させてきた人達が現在の上位層なので、過去の成功体験に捕らわれることなくマーケティング力向上に意識改革できるか否かが、今後の繁栄に大きく影響する。

DXに関しても同じことが言える。これまでの方法が通用しなくなる中で、新しい考え方をいかに取り入れてもらうかが肝になってくる。30代の中堅層としては功労者にリスペクトを持ちつつ、時代が変わっていることをいかにして伝えるかを考え、DXという取り組みに主体的に関わってもらう社内マーケティングを実行していきたい。

キャリア形成に悩んでいる

筆者はキャリア形成において大事なことは3つあると言っています。

  • 会社ではなく職能(スキル)を選ぶ
  • 職能によって収入の幅はある程度決まっている
  • 強みを生かせる職能を選ぶ

著書の森岡氏は現在51歳ですが、就職活動時から終身雇用はいずれ終わるので、市場価値の高いスキルを得られる仕事かどうかという軸でP&Gに就職しています。また職能によって市場価値は変わるため、自分の目指す職能がどの程度の給与水準なのかを知っておくことも重要だと言っています。お金が大事というわけではなく、判断基準の一つとして忘れてはいけない要素です。

最後に、自分の好きなことから強みを見つけ、それを生かせる職能を選ぶことも重要だと言っています。弱みを克服しようと辛い思いをするよりも、強みを生かして仕事をした方が成果も出しやすいでしょう。最後にキャリアについて本書の中の好きな一節を紹介します。

ナスビはどうやってもキュウリにはならないのです。キュウリが大好きな上司が、ナスビを無理やりにキュウリにしようとすると、その部下は残念なナスビにしかならないのです!ナスビをとてつもなく立派なナスビにすることをもっと意識した方がよいのです。

ここからは何を学んだ?

キャリアチェンジによって自分が好きで得意な「教える」ことをできるようになったので、バリバリやっていきたいと思ったよ。感想だけど。

強みを伸ばして成功する

理工系の大学院を卒業したため、技術職としてメーカーに就職しましたが、正直なところ科学を本質的に突き詰めるのはあまり好きではありませんでした。受験勉強に気合いを入れすぎて、身の丈以上の大学に入り、周りの友達との学力差に軽く自信を無くしていたのも理由かもしれません。

一方で、大学・大学院時代に6年間続けた塾講師のアルバイトでは、給料も出ないので生徒一人ひとりにあった問題集を自作するほど熱中しました。今は、教えるものが「DX」に変わりましたが、当時と同じように高い熱量を持って仕事に取り組めています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【書評】最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

訪問いただきありがとうございます!

この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 社内文化を変革に取り組んでいるが行き詰っている
  • 間接部門の会社への貢献って何だろう?と悩んでいる
  • チームリーダーとして部下の育成方法に悩んでいる

DXの必要性が声高に叫ばれる現代ですが、デジタル技術はあくまでツールなので、考え方の変化や変化を受け入れる風土への変革が必要と言われています。ですが、簡単なことでは無いので、悩んでいる方は多いと思います(私もその一人です)。

またDXを推進する部署は基本的に間接部門ですが、実際に利益を生み出す事業部門と異なり、自分たちの価値がふと分からなくなる時があるかもしれません。そのような組織を率いるリーダーの方はなおさら悩みは尽きないかもしれません。

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

社内文化を変革に取り組んでいるが行き詰っている

大阪ガスのデータ分析組織「ビジネスアナリシスセンター」は、発足当時の便利屋的な立ち位置から社内の各部署から信頼され様々な依頼が来る組織となるまでに様々な困難を乗り越えてきました。簡単ではないことが分かりますが、乗り越えるべき壁が明確になります。

事業部門と連携する壁

データ分析には3つの力(見つける力・解く力・使わせる力)が必要ですが、いずれの力を最大限に発揮するためには事業部門のことを良く知り、事業部門と良好な関係性を築く必要があります。

なぜなら

  • 価値ある問題設定をするためには事業部のビジネスを知ることが必要
  • 正しい解を出すためには事業部が扱う技術の原理原則を知ることが必要
  • データ分析結果を使ってもらうためには事業部からの信頼が必要

だからです。

本書を読んでいて事業部の意識が低すぎる気もしたが、自分が事業部にいた時を振り返るとデータ分析組織がそれぐらい主体性を発揮することが、実際のところ必要なのだと感じる。

会社の経営に貢献する壁

事業部と連携する壁を乗り越えると特定の事業部への貢献は問題なくできるようになります。しかし、そのままでは全社的に貢献する組織ではありません。また、事業部にとって重要な課題であっても全社的に見れば重要でない可能性もあります。

間接部門は全社に貢献すべき組織なので、特定の事業部に貢献できている状況に満足し、やり取りのしやすい状況(コンフォートゾーン)から抜け出す意思が必要です。

私の学び

データ分析者に必要な力は「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つ。

データ分析というと解くことに注意を向けがちだが、企業にとって意味のある問題を見つける力とデータ分析によって得られた結果を依頼者に使ってもらえるようにする力も重要。

見つける力が無ければ、成果に全く繋がらない問題や全体最適ではなく部分最適にしか繋がらない問題を提起してしまうことになる。スタートが間違っているとその後をどれだけ頑張っても意味は無い(むしろ頑張れば頑張るほど悪い)。

また使わせる力についても、依頼先の部署がデータ分析の結果を使って収率や収益を向上させなければ、そのデータ分析に価値は無い。

企業に勤めている以上、その企業に貢献できたか否かという軸は忘れてはならない。

間接部門の会社への貢献って何だろう?と悩んでいる

意思決定プロセスの変革・データ活用風土の浸透

データ分析によって従来の勘と経験に頼った方法よりも良い方法を見つけることができます。しかし、それだけでは成果とはなりません。現場がその結果を使って成果を出して初めて、データ分析が貢献したと言えます。

そういう意味で、データ分析組織の会社への貢献とは、

「データ分析によって得られた解を活かして意思決定プロセスを変革すること」

と言えます。

そして、その貢献度合いは経営に近づけば近づくほど大きくなります。

また、データを活用する風土を浸透させたことも功績として挙げられます。データ分析による価値が社内で広まると、次第に「データを活用すれば成果を出せるかもしれない」とデータ分析組織以外も主体的にデータを活用するようになりました。

このようにデータ分析組織の会社への貢献は

  • 意思決定プロセスの改革への寄与
  • データを活用する風土の浸透

の2つです。

私の学び

人事や経理など他の組織でも同じように会社への貢献を考えることができると私は考えます。人材データや会計データを活用して、会社をより良くしていくための経営への提言は長期的に見て企業への貢献度合いは大きいでしょう。

また、人事や経理の仕事内容や企業運営の中で担う役割について全社員に教育することで、自分の仕事以外の視点を持つことも長期的に見て効果的だと思います。

特に会計の知識などは、私自身、事業部にいた時は考えたことなどありませんでしたが、「稲盛和夫実学 経営と会計」を読んで、事業部時代から必要な学びだったと実感しました。

tsukushikun.hatenablog.jp

チームリーダーとして部下の育成方法に悩んでいる。

データ分析組織として社内からの信頼を得た後、永続的に発展していくためにはチームメンバーの育成が重要です。一企業のデータ分析担当者は役職に限らず、企業内の様々な課題の解決が業務であるため、一貫した能力開発が難しい側面があります。

また、一括採用後に各部署に配属されるシステムの影響でデータ分析者を志して配属されたわけではない可能性もあります。そのため、各部員が自信のキャリアパスを描きにくく、モチベーションを維持できないという課題があります。

ここにも乗り越えるべき壁がありました。

分析組織のメンバーを育てる壁

データ分析組織では、一般的な能力開発であるロールモデルを見つけて、それを目指すということができません。

しかし視点を変えれば、自分でロールを作ることができます。なので、データ分析の3つの力「見つける力」「解く力」「使わせる力」を念頭に置きつつ、各部員の能力開発を進めます。

その後、外部コミュニティへの参加を奨励し、より市場価値の高い人材となることを目指させています。

モチベーションを維持する壁

モチベーションを維持するためには業務を通した成長が不可欠です。

そして、成長を促してくれる仕事は責任と成果が明確です。組織のリーダーは各部員の力量を冷静に見極め、データ分析の「見つける→解く→使わせる」の最初から最後までを一貫して任せることで、責任と成果を明確化する必要があります。

また似たような分析案件を複数回扱うことによるマンネリ化を防ぐために、一度扱った分析案件は事業部門に任せることも行っています。事業部門との軋轢が生じかねない調整ですが、組織のリーダーが先頭に立って行うことで、部下のモチベーション維持に努めています。

私の学び

組織のリーダーは部下の力量や考えを把握するために注意深く観察する必要があると感じた。もちろん各々のメンバーが主体的に能力開発をするのがベストだが、そうでない場合はリーダーが努力しなければならない。

メンバーのことを知り、成長のプロセスを描くことは簡単な仕事では無いので、「プレイヤーとマネージャーは違う」ということを改めて感じた。

マネージャーになったタイミングで、これまでの仕事のやり方ではダメなのだと頭を切り替え、仕事の采配をしていきたい。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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