社内DXに取り組む私が読んだ本を紹介するブログ

30代男性がDX推進に苦戦する中でヒントを得ようと読んだ本の学びをシェアします。

【書評】生産工場のDXがよ~くわかる本

訪問いただきありがとうございます!

この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

・製造業における工場運営の基本を学びたい

・生産工場におけるDXネタのヒントを得たい

私は生産部署を経験した後にDX推進部署に異動しています。

その経験から生産部門のDX推進を担当していますが、思いつくネタの少なさに課題を感じていました。参考になることは無いかと本書を手に取ったところ、そもそも工場運営の本質的な知識が不足していたことに気付きました。

DX推進者はもちろん、製造業に従事して日が浅い方が基本を押さえるために読む本としてもオススメです!

割りと網羅的に書かれた本なので、個人的に忘れないようにしたい部分をピックアップして紹介します。

製造業における工場運営の基本を学びたい

製造業の利益は3つある

まず初めに製造業の利益は3つあります。

  • 第1の利益:営業利益(売値と製造原価との差の利益)
  • 第2の利益:直接費圧縮利益(自動化・省力化により製造原価を削減して得られる利益)
  • 第3の利益:管理利益

成長段階にある市場では売れる製品を売り出すことで第1の利益を得ます。そして、小品集・大量生産時代でもあるので、自動化と省力化により第2の利益も追求してきました。

しかしながら、市場が成熟した現代では多品種・少量生産となり他社との差別化や自動化・省力化による利益追求は頭打ちになっています。そのため、第3の利益獲得が今後も生き残るために不可欠となっています。

第3の利益は生産現場のムリ・ムラ・ムダを解決または改革することで得られます。ムリ・ムラ・ムダは全体で見ると大きいものの一つ一つは小さいため、データによる実態把握が困難でした。

しかし、昨今のデジタル技術の発展によりデータ採取と解析が容易になったことで、第3の利益に切り込むことが可能となりました。

コントロール管理とマネジメント管理

製造業の運営は、コントロール管理とマネジメント管理によって行われます。

コントロール管理とはQCD(品質:Quality,費用:Cost,納期:Demand)の目標を達成するためのものです。費用に着目すると製造原価がありますが、製品毎の実績原価はバラつきます。

言われてみれば当然で、製品一つ一つの生産で見るとスムーズに行ったものもあれば、トラブルや不手際によってロスを伴ったものもあります。

ロスによって余分に消費された原材料や時間(人件費や機械占有時間)は製造原価に乗るため、スムーズに生産できた製品と比較して製造原価は高くなります。

マネジメント管理とは経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を活用して業績を向上させるためのものです。情報資源の活用が最も遅れていると言われており、第3の利益を得るためには、1日といったマクロな情報ではなく、1作業レベルのミクロな情報が必要です。

このミクロな情報は、これまで取得が困難でしたが、デジタル技術の発展により容易になっています。

生産工場におけるDXネタのヒントを得たい

新たなデータが照らす実態

製造現場のデジタル技術に代表されるIoTを活用することで従来の技術では捉えられなかったことや目には見えないミクロな情報を取得できるようになり、工場運営の実態をより詳細に把握できるようになりました。

特にムラ(品質などのバラつき)に関して、大きな効果が期待されます。品質管理は規定値の範囲内に収まるように行われています。

そのため規定内で推移している場合は特に課題が無いように思えますが、ロット毎の実績原価を把握すると±10~30%のバラつきが生じています。

最も成績の良いロットをBMとして、生産方法を最適化することで更に安定した品質管理を達成することができます。

このように詳細にデータを取れるようになったことで明らかな課題以外からでも改善のテーマが見つかるようになります。

実績原価を明らかにして経営戦略を変革する

製品毎の実績原価が分かることで、コストダウンによる改善だけでなく経営戦略の変革も可能となります。

実績原価が明らかになることで工場の実力や銘柄毎の製造難易度を定量的に把握することができます。

そこに現在の売値や利益貢献度を重ねることで、他社が追随できない販売戦略やより利益を生む銘柄への選択と集中などこれまで感覚的に行っていた経営戦略を定量的に行うことが可能になります。

私の学び

生産現場の課題というも実際にロスになっているものに目が行きがちだったが、ロスになっていないだけで利益創出に繋がることがあると学んだ。

個別実績原価は把握できていない工場が多いと思うが、自分たちはできていると思っているかもしれない部署に生産部署外の人間となった自分がどのようにアプローチしていくかが今後の課題。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【書評】本を読む人だけが手にするもの

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この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 本を読むメリットを言語化したい

本を読まないよりは読んだ方が良いとは何となく思うものの、本を読まない人に「なんで?」と言われると困ることありますよね。本書の中で本を読む理由を問われた時に私も言語化できないな・・・と思いました。

タイトル通りですが、本書を読むことで得られることが分かります。

本を読むメリットを言語化したい

現代は考える力が求められている

私たちの社会は、かつては「みんな一緒」の努力が求められる成長社会でした。

しかし、現代は「それぞれ一人ひとり」の個性や考えが尊重される成熟社会へと変化しています。

この変化によって、私達は「自分で考えること」を強く求められるようになりました。

ビジネスの世界でも、単に性能が良ければ売れる時代は終わり、顧客一人ひとりに響くメッセージを持つことが重要になってきています。

つまり、どのようにして顧客の心を掴むかを考えることが企業の生存戦略となっているのです。

読書が考える力を養う

このような時代において、考える力を養う方法として読書が有効です。

本は筆者の思想や知識が凝縮されており、読むことで新たな視点を得ることができます。これにより、自分の考え方の広さと深さが増します。結果として考える力が向上します。

本を読まなければ、自分の経験からしか考えることができないため、考え方の広さと深さは不十分なものとなるかもしれません。

考える力は様々な力が合わさったものですが、いずれも読書によって高めることができると著者は言っています。

本のジャンルによって高められる力は変わってくるので、自分の興味以外の分野も読む乱読が、考える力を高めるためには重要です。

私自身、乱読はまだまだできていないので、書店でジャケ買いするところから始めてみようかなと思っています。

どのジャンルの読書がどのような力を高めるのに役立つかについては本書を読んで見てください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【書評】マーケティングとは「組織革命」である。

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この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 組織のあるべき姿について模索している
  • 社内文化の変革に取り組んでいるが行き詰っている

「1人の力でできる仕事は無い」とはよく言いますが、具体的にどういう組織なら良いのか言語化するのは難しいですよね。

また言語化できても組織を実際に変えていくのは、様々な抵抗勢力の影響で更に難しいと思います。

社内DXに取り組んでいる私もこれらの課題に直面しています。

しかし、人の本質を理解することでこれらの課題を解決できるかもしれません。

組織のあるべき姿について模索している

理想の組織=人体

人体は「環境に適応して生存する」という目的を果たすために、各部位が互いに役割を果たし合う「共依存関係」にあります。

仮に各臓器が足を引っ張り合い、互いの働きを阻害するようなことになれば、人体は生存することができません。

森岡氏は組織も人体のような共依存関係が理想だと考えています。

企業では、「急激に変化する市場環境に適応して、収益を上げる」という目的を果たすために、生産部、営業部、マーケティング部、研究開発部、、、などの様々な部門が各々の専門性を活かします。

また、一つの組織内でも組織の目的を達成するために、各自が各々の役割を果たします。部長や課長、一般従業員といった役職は上下関係ではなく、意思決定をする、現場の情報を収集する、というように役割が違うだけです。

人間の本質「自己保存」を逆手に取る

ただ実際には、部門間で足の引っ張り合いをしていたり、管理職の機嫌を取るために労力を割いていたりと企業全体の目的に反した行動が行われている光景は珍しくありません。

なぜそのようなことが起きるのか?というと、個人の目的と企業の目的は必ずしも一致しないからです。

人間は「自己保存」という現状を維持しようとする強い性質を持っています。

そのため企業全体にとって良いことであっても自身は不利益を被る場合、自分を守るために抵抗します。

部署単位などの組織であっても自部署が不利益を被り、管理職の評価が下がる場合は同様に抵抗勢力となることは避けられません。

逆に、行動しないことによって自身が不利益を被る場合、人は自分を守るために行動します。

企業は個人の自己保存と企業の目指す方向が同じになるように人事制度や評価制度を設計することが必要です。

私の学び

社内DXを推進する立場としては、1つの部署だけDXを推進した結果、業務の繋がりがある他部署との整合性が取れなくなったという事態にならないようにしたい。

そのためにはメーカー業務の川上から川下にあたる原料購買や設備管理から販売までの繋がりをまず把握することを心がける。

また自己保存の本能については、他部署との協業が不可欠なDX推進部署としては常に念頭に置く必要がある。

全社最適の観点で正しくても、短期的に手間が生じる、自分達のパフォーマンスが定量的に分かるようになり評価が悪くなるかもしれないといった考えから自己保存の本能が働き、提案が通らない可能性を考慮した準備をしていきたい。

社内文化の変革に取り組んでいるが行き詰っている

大きな権限を持っていない自分でも会社を変えることができるのか?と不安になることがあるかもしれません。

しかし、著者の森岡氏はUSJの部長職時代に大博打であった「ハリーポッターエリア」の建設を承認させるという変革を成し遂げています。

意思決定者は立場も年齢も上の人ばかりという環境の中で外様の著者が成し遂げたのです。

私もできると信じてやるしか無い。むしろなぜ信じれないのか?と言わざる負えない気持ちです。

ただ気持ちだけではもちろんダメで、困難な挑戦であるからこそ入念な準備が必要です。

変えたいことは組織の戦略に沿っているか?

担当者レベルでも会社を変えていくことは可能ですが、提案の視座も担当者レベルでは採用されません。

なぜなら意思決定者はさらに高い視座で企業や組織運営を考えており、担当者にとって大事なことでも意思決定者にとっては大事では無いからです。

例えば、売上比率1%未満の製品と10%の製品であれば、10%の製品が大事なのは明らかです。しかしながら1%の製品の担当者にとってはそれが全てになってしまい、全体を捉えた提案ができずに却下されてしまいます。

なので意思決定者の戦略、会社の戦略に沿った提案をすることは必要最低限の条件です。

ターゲットに響くよう入念に準備する

提案が会社の戦略に沿っているだけでは十分ではありません。

意思決定に影響を及ぼす人をターゲットに定め、Who・What・Howの観点でその人に響く提案方法を考える必要があります。

まずWhoでは、意思決定者は組織全体のことを考える人なのか、それとも自身の自己保存が最優先なのかをまず把握します。

Whatでは、提案内容にやりがいや実現可能だと思わせるストーリーを盛り込みます。

最後にHowでは、相手のコミュニケーションスタイル(プッシュorプル)に合わせて、自分の提案を相手が聞きたいように伝える方法を考えます。

これら全てを徹底的に準備することで、相手が自分の提案を好意的に捉えるようになり、承認してもらえる可能性が最大化します。

私の学び

上司は現場のことが分かっていないと燻っていた工場勤務時代は、これらの準備を全くできていなかったと本書を読んで反省した。

他部署を巻き込むことが不可欠なDX推進では、全社の目標だけでなく関係部署の目標や意思決定者のタイプなど把握する努力が今まで以上に必要となる。

一朝一夕で身に付くものでは無いが、様々な意思決定者とのやり取りを求められる環境はこの上ない成長機会とも言える。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【書評】稲盛和夫の実学 経営と会計

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この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 経営の実践的な考え方を学んで自身の考えをアップデートしたい
  • 経営における会計の役割を知り、業務に活かしたい

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

経営の実践的な考え方を学んで自身の考えをアップデートしたい

本書では稲盛和夫氏の考える経営哲学が7つの原則として説明されています。

  1. キャッシュベース経営の原則
  2. 一対一の対応の原則
  3. 筋肉質経営の原則
  4. 完璧主義の原則
  5. ダブルチェックの原則
  6. 採算向上の原
  7. ガラス張り経営の原則

ざっくりまとめると、

  • 計算上の利便性ではなく現実をリアルタイムに反映することに拘る
  • 無駄を省く
  • 100%の正しさに拘り不正を防ぐ
  • 全従業員に対して経営状況をオープンにして、各人が付加価値を追求する

ことと言えます。

印象に残った考えについて紹介していきます。

原理原則に沿った会計を行う

原理原則に沿うと、企業経営の実態を正確に把握するために、モノ・お金と伝票を一対一で対応させる必要がある。

対応させるタイミングも同時で無ければならない。でなければ、取引が月末間近の場合に商品は売れたのにお金は無いというように実態を正確に表すことができない。

また、設備の原価償却は「法定耐用年数」に沿って行われるが、大まかな分類で年数が決められているため、実際の耐用年数と合わない時がある。

実際の耐用年数と法定耐用年数が合っていない場合、年間の設備購入費用は現実を正しく反映できないため、利益を過剰もしくは過小に計算することになる。

これは経営の原則にも会計の原則にも反するため、京セラでは「自主耐用年数」を定め、実際に即した会計を行っている。

このように会計の常識とされていることでも原理原則に立ち返ってあるべき姿を稲盛氏は追求してきました。

何事においても、物事の本質にまでさかのぼろうとはせず、ただ常識とされていることにそのまま従えば、自分の責任で考えて判断する必要はなくなる。

本質に立ち返って無駄を省く

利益は売上から経費を引いたものなので、経営の原点は「売上を最大に、経費を最小に」を追求すること。

例えば、生産性ばかりを追求して高価な最新鋭の機械を導入するのではなく、生産性と投資費用の観点で旧式の機械の方が利益は大きくなるのでは無いかと考える。

最新式が良いに決まっている、売り上げが増えれば経費は増えるものといった常識に惑わされることなく、経営の原点を常に意識することが必要です。

私の学び

科学同様、会計の世界にも原理原則がある。稲盛氏は人として正しいことをするという原則のもと、数字に嘘をつかない会計に徹していた。時代によって会計手法は変わるかもしれないが、原理原則は何か?本質は何か?という問いを常に持ち、常識に惑わされないようにする。

また流行りのESGやSDGsに関しても会計の様に数値管理していくことが今後(もしくは既に)求められるため、本質は何か考え、評価指標について自身の考えを作っていく。

経営における会計の役割を知り、業務に活かしたい

会計は経営におけるコックピットのメーター

企業を長期的に発展させていくためには、適切な意思決定を繰り返していく必要があります。そして、そのためには企業の経営状況を正確に把握する必要があります。

そこで稲盛氏は、

経営に関する数字は、(中略)飛行機の操縦席にあるコックピットのメーターの数値に匹敵するものであり、経営者をして目標にまで正しく到達させるためのインジケーターの役割を果たさなくてはならない

と考えました。

またコックピットに表示される数値と現実の値にタイムラグがあれば飛行機の操縦を誤ることから、会計も遅滞無く企業の経営状況が反映されなければならないと考えました。

それが、「一対一対応の原則」と「完璧主義の原則」に繋がっています。

また、目的地が無ければコックピットのメーターは意味を成しません。同じように経営における目的地である目標は重要なものです。

「予定」つまり「目標」は経営者の意思の表現であり、自らの手で新たにつくり出そうとしていくものを描き出したものである。その意味で予定は決して変更されるようなものではなく、(中略)仲間と一緒にどんなに環境が変化しようと最後までめざすべきものなのである。

会計が分からなければ真の経営者になれない

その部門の売上、経費の内容を見ていくと、ひとつの物語のようにその部門の実態がわかってくる。その部門の責任者の顔を思い浮かべながら、「こんなに無駄な費用を使っている」「材料代が売上に占める割合が大きすぎる」と経営上の問題がひとりでに浮かび上がってくる。

このように注意深く月次決算書を見ていると、工場へ行き、問題のある現場を通りかかったときに、「ここは先月こうだったな」と思い起こし、どこが問題なのかを、即座に指摘することができる。その現場の責任者が注意をした通りに対策を打っていると、翌月の月次決算にすぐあらわれる。こうして会社全体の実績がよくなっていくのである。

(中略)

経営者自身が会計を十分よく理解し、決算書を経営の状況、問題点が浮き彫りとなるものにしなければならない。経営者が会計を十分理解し、日頃から経理を指導するくらい努力して初めて、経営者は真の経営を行うことができるのである。

下手に要約するより、原文の方が伝わるものがあると思い、心に残った部分を引用しました。

私の学び

経営状況を見ただけで把握できるようなダッシュボード(まさに飛行機の計器盤のイメージ)作成に取り組むも、そもそも経営にはどんな情報が必要なのか?と思ったのが、本書を手に取った経緯。冒頭に会計は企業経営における飛行機の計器盤と同じという話が出てきた時は思わず興奮してしまった。

大企業であれば部長や事業部長もその部門の経営者と言えるので、同様の意識が必要。

DXを推進する立場としては、企業運営や部署運営に必要な情報の自分なりの仮説を持った上で、責任者の人たちに話を聞く活動をしていきたい。

また、現場の問題点も分かると稲盛氏は仰っていることから、現場に合ったダッシュボードを作ることも必要。ただ、現場視点から作るのではなく、経営視点からブレイクダウンする形で作るのが良さそう。

飛行機の計器盤を考えると、計器盤に表示される項目がオリジナリティに溢れているとパイロットが混乱してしまうので、ある程度決まったフォーマットがあると思う。

それと同じように企業経営や部署運営に必要な情報も各々に異なるのではなく、ある程度の共通解があるのではないか?

本書では、会計の中身自体にはあまり触れられていないので「財務諸表3票一体理解法」を読んで勉強していきたい。

最後までお読みいただきありがとうございました。

「この本を読んでみようかな?」と思われた方はこちらから購入してみてはいかがですか?

【書評】確率思考の戦略論

訪問いただきありがとうございます!

この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 戦略を定量的に立て、関係者への説得力を高めたい
  • 立てた目標を達成するための効果的なアプローチを知りたい

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

戦略を定量的に立て、関係者への説得力を高めたい

本書では、ビジネス戦略の成否は「確率」で決まっていると述べられています。

複数の人間が一定期間中に特定の行動をした回数の分布は負の二項分布(NBDモデル)に従うことが分かっています(本書の中では、パンケーキを1週間に食べた回数)。

これと同様に、消費者が商品を購入する際に、商品カテゴリーの中から何を選ぶか?ということも数式で表現することができます。

パンケーキの例は「回数」を、商品購入の例は「商品」を選んでいると言えるから同様の考え方を適応できるんだね。

パンケーキを食べる回数にパンケーキがどれだけ好きかが影響するのと同じように、商品に対する好意度(プレファレンス)が影響します。そして、好意度によって数学的に選ばれる確率が決まるため、戦略が成功するか否か、成功するためには消費者からどれぐらい好まれていないといけないかが分かるようになります。

本書を読めば、USJの資金力では大博打であった「ハリーポッターエリア」の建設を例に、数学を駆使して周囲を説得し、実行した内容を知ることができます。

ここから何を学んだ?

何かを選択する行動を数式でモデル化できることを知れて良かったです。

商品もブランドも選ばれる確率は消費者のプレファレンスに従い負の二項分布(NBDモデル)になる。

購買行動を数式でモデル化できるのか!?と素直に驚き。マーケティング業務をしている人にとっては常識なのだろうか?

私は社内DX推進に全社員を巻き込むため、社内SNSでの情報発信をしているが、全体への影響を持ち始める反応の数や変革に前向きな層が増え始めた兆候も数式でモデル化できるのだろうか?と思ったので、書籍を探してみることにした。

戦略、つまり経営資源の配分先は、結局のところPreference(好意度)、Awareness(認知)、Distribution(配荷)

プレファレンスが売上の最大ポテンシャルを決め、認知と配荷が最大ポテンシャルを発揮できる割合を決める。しかしながら、認知と配荷にプレファレンスが影響するため、プレファレンスに最も焦点を当てるべき。

DX推進部署のような間接部門は、企業の利益を生み出している事業部門からするとお金を無駄遣いしている部署と思われがちである。まずはDX推進部署へのプレファレンスを高めるために、「会社や自分たちにとって価値ある活動をしている」と思ってもらえるよう活動の質を高めることに注力する。

その後、認知を高めるための情報発信や情報を直接届けるための活動を行っていく流れが良いと考えられる。現在は、活動自体は走り始めているので伝えるところも力を入れていく。

立てた目標を達成するための効果的なアプローチを知りたい

目標を立てた後は、目標を達成した状態を定量的に定め、戦略を立てていきます。筆者は、目標達成時と現在のギャップを定量化しながら徹底的に想像しているそうです。

例えば、3年以内に1000万人の集客を達成したいと目的に掲げた2010年のUSJの場合。

  • 1000万人のパークになるには、ブランドの強さはどの程度必要か?
  • 年齢・性別・エリア別でUSJのプレファレンスはどうなっているべきか?
  • 通常チケット入場者と年間パス来場者の割合は?
  • 組織にどのような人材が必要か?
  • 新たに整備すべき組織システムは何か?

等の要素を徹底的に洗い出しています。

そして、それらの数値の妥当性を需要予測などを用いて検証し、もっとも達成に現実味のあるシナリオを明確化することで戦略が完成します。

これは現状から目標到達までの階段のようなもので森岡氏は

どんな高い壁でも、階段さえ作れば登れる

と言っています。

また成功確率を高めるために、一度考えたシナリオとは異なるアプローチで目標を達成する戦略を考えます。これによって当初のプランの脆弱さや盲点に気づくことができます。

戦略立案においてもうひとつ重要なことは「感情」を入れないことです。

数学的に最も成功確率が高いとされる戦略であっても、上位者のひと声や社内政治による忖度などで捻じ曲げられてしまうことは往々にしてあります。しかし、そのようなことをしていては戦略の成功確率は下がってしまいます。まさにダーツの中心部分が戦略の成功、それ以外を戦略が成功しないとした場合、中心を狙わずして中心部分にダーツが行く確率が高くなるでしょうか?という話です。

ここから何を学んだ?

仕事に取り組む以前の考え方をアップデートできました!

日本人の相手はサイコパスだと思った方がいい

サイコパスと聞くと悪いイメージを持つかもしれませんが、「感情的葛藤や人間関係のしがらみなどに迷うことなく、目的に対して純粋に正しい行動をとれる性質」のことを言います。そして、戦略立案、戦略実行という意思決定は、誰かが確実に損をする、誰かの意見を否定するなど心理的負荷をともないます。海外企業で長く働いてきた森岡氏の感覚では、日本人ならば「そんなエゲツないことはちょっとできない」とためらうことも、彼らは目的に対して正しければ平気でやれてしまう。

グローバル化が進んだ現代では、そのようなサイコパス性の高い人々が戦う相手ということは忘れてはならない事実。私が勤める企業も海外に関連会社が多数あるため、グローバルにDXを推進する施策も多々あるため、日本の常識は海外の非常識であることを強く意識したい。

合理的に準備して、精神的に戦う。

森岡氏は、戦術面での強さ、現場の団結力、士気や規律意識の高さ、勤勉さなどは、日本人の卓越した強みと言っています。日本にいると当たり前と感じてしまいますが、海外も知っている人からすると大きな強みということは、先ほどの戦う相手はサイコパスと共に覚えておきたい。

確率思考をはじめ戦略の合理性を増すことは、日本人の戦術面の強みをもっと活かすことに他なりません。100%は絶対にない世界で、残りの数%なり数十%なりの不確定さや想定外の困難を乗り越えていくのは、ぎりぎりまで戦術にこだわって確率を高めていく、戦略家本人の意思の力であり情熱の力です。

大きな目標は立てるが、その状態を定量的に表現できずに達成できなかった経験は何回かしているので、決意を新たに徹底していく。

また、ジャンルによっては定量化するための数式があるものもあることを知った。知っているか知らないかで大きな差が生まれてしまうので、情報収集や勉強を続けていく。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【語る】緋弾のアリア

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今回はビジネス本の紹介ではなく、私が愛して止まないライトノベル緋弾のアリア」の魅力を少し語ります。

この作品は次のような作品が好きな人にオススメです。

・アクションが好きな人

・ファンタジーが好きな人

・何年越しで繋がる伏線にワクワクする人

主人公の遠山キンジは武偵という武力行使を許可された探偵を養成する東京武偵高に通う学生で、ある日、通学用の自転車に爆弾を仕掛けられたところを神崎・H・アリアという武偵に助けられたところから物語は始まります。

そして様々な敵と戦い、基本的にその敵を仲間にしながら、どんどんスケールの大きな戦いに身を投じていきます。

ここから特に語りたいポイントについて書いていきます。

・主要キャラが偉人の子孫

遠山という名字からピンと来た方もいるかもしれませんが、主人公の遠山キンジは遠山の金さんこと遠山金四郎の子孫です。またヒロインの神崎・H・アリアはシャーロック・ホームズの子孫で、ミドルネームのHはHolmesのHです。このように主要な登場人部が歴史上の偉人の子孫という設定で新しいキャラが登場するたびにワクワクしています。

・主人公がとあるトリガーで強くなる

主人公の遠山キンジはHSSという特殊体質を持っており、あるトリガーによって戦闘能力が大幅に上がります。能力の上がり方もワンパターンではなく、基本は30倍でも特別版は更に1.8倍といった具合に能力を強化することで通常時では全く歯が立たない相手とも戦っていきます。特別版はたまにしか出てこないので、出てきた時はとてもワクワクします。

・主人公の技が現実離れしまくっている

遠山キンジは拳銃と格闘技で敵と戦うのですが、要所で使う技が現実離れしていて読んでてワクワクします。あげればキリがありませんが、相手の銃弾に自分の銃弾を当てて跳ね返したり、銃弾を掴んだりと銃が効きません。笑 よくそんなに思いつくなと毎回読んでいて思います。また格闘面でも、全身の筋肉の動きを連動させて亜音速で殴るなど様々な技を使っており、詳細はあまり理解できていませんが、激しい戦いをしてるんだろうなぁと頭で想像して楽しんでいます。まぁ超能力を使えるキャラもいるのでほとんどのキャラが現実離れしています。笑

・作り込まれた物語

現在40巻まで発売されており、1つの組織との戦いが終わったかと思えば、すぐに別の戦いが始まり、戦いのスケールが大きくなっているのは前述した通りですが、何十巻も前に出てきた用語の意味が不意に回収されたり、世界観を共有した作品である「やがて魔劍のアリスベル」で8年前に記述されていた内容が最近出てきたりと「あれ?これどっかで書いてた気するぞ。」と物語の繋がりを楽しむことができます。今、対峙している敵が最後の敵のような感じがしていますが、事前にどこまで考えてこの物語を書き始めたのかとても気になります。

・丁寧に描かれた空間

物語の序盤は日本で戦うことが多かったのですが、中盤以降は世界中で戦うことが多くなっています。各巻の冒頭は、世界各地の生活に馴染む時間があるのですが、地域の自然環境、そこに住む人々の生活や食事などが非常に丁寧に描かれており、旅行しているような気に少しだけなります。物語のメインではありませんが、きっちり取材して書かれており緋弾のアリアを面白くする重要な要素だと感じています。実際、40巻の舞台はエジプトですが、キンジが受けた観光客への洗礼が厳しすぎて、エジプトには行けないなぁと思ってしまいました(赤松中学先生も受けたのでしょうか?笑)。

・登場人物がみんな可愛い

イラストを担当しているこぶいちさんのイラストがめちゃくちゃ可愛いです。イラストだけでなく著者の赤松中学さんが描かれる登場人物の所作もとても可愛いです。ヒロインポジションのアリアはアニメ版の声優が釘宮理恵さんということからも分かる通り、Theツンデレキャラで可愛いです。また24巻で初登場したネモというキャラも、ハプニングによって遠山キンジと無人島に遭難する回で一気に推しキャラになるぐらい可愛いポイントを溜めまくりました。でもアリアが出てくると嬉しい自分もいて勝手に悩ましくなっています。笑

つらつらと私の大好きな作品について語ってみました。全く語り尽くせていませんが、この記事をきっかけに緋弾のアリア好きの人が増えたらめちゃくちゃ嬉しいです。

【書評】サイロ・エフェクト

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この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 全体最適の必要性が分かる具体的な事例を探している
  • サイロ化を打破して、組織として成果を上げたい

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

全体最適の必要性が分かる具体的な事例を探している

本書には、サイロ化による問題とサイロ化を克服して成果を出した実例が4つずつ紹介されています。

まずサイロ化とは組織間の情報や業務のプロセスが繋がっておらず、別個に独立して存在している状態のことです。農場にそびえ立つサイロのようだと捉えてサイロ化と呼んでいます。

現代は、職業の専門家や技術の高度化が進んでいるため分業は不可欠になっているため、サイロ化は避けることができません。

一方で、サイロ化が蔓延り機能不全となった組織はサイロを使いこなした組織に敗れてしまいます。

ソニーのサイロ化:同時期に発表された同じ機能の互換性の無い3つの商品

1990年代、ソニーは大規模化と複雑化という問題を解決する最適な手法として会社を独立した専門家集団(サイロ)に分割することを実施した。

当時、巨大企業は単一の事業体ではなく、独立した事業ユニットを作り透明性や効率性を高め、責任の所在を明らかにした方が良いという考えが普及していた。実際、改革初期のソニーでは、各組織が収益に責任を持って努力することで大きな改善効果を得られていた。

しかし、次第に各組織が収益の良さを争うようになり、他の部門とのアイデア交流、優秀な社員の他部門への異動を避けるようになった。すぐに利益を生まない長期投資も避けるようになり、成長に必要なリスクを控えるようになってしまった。

その結果、音楽体験がデジタルに移行し始めた1990年代初頭、ソニーは各事業部門が独自のアイデアを検討し、同じ機能を持つ互換性の無い3つの商品を発表した。一方、Appleではスティーブ・ジョブズのワンマン体制のもとiPodが発表され、Appleが業界首位の座を瞬く間に獲得した。

殺人予報地図の作成:各部門の持つデータをクロスする

アメリカのシカゴはギャングが多く殺人が悲劇的なほどに多い場所であった。そこに他業界で成功を納めた1人の人物が己の正義感に突き動かされて警察官となった。

シカゴもソニーの例と同様に組織間でデータを秘匿していたが、データを一元管理することを根気強く働きかけた。集めたデータを紐づけると、ギャングの移動情報、地理的情報、気温などから殺人が起きる可能性の高い場所が分かるようになりました。

その結果、シカゴの殺人事件数は劇的に改善したのです。

私の学び

大企業の場合、見るべき範囲が膨大になってしまうため、単一の企業運営ではなく各事業毎に責任を持たせることは有効。

お互いに競争心を持って切磋琢磨し、業績を高める正のスパイラルを生み出せる可能性もある。

一方で、ソニーのように他の部門に負けたくないからと足を引っ張り合う負のスパイラルに陥る可能性もある。

ここで考えたいことは「戦う相手は一体誰なのか?」ということです。企業が戦う相手は他の企業であって、他の部門ではありません。他の部門と争っていては同じ企業とは言えないと思います。

経営層、各部門の責任者、そして担当者のそれぞれが「各部門の利益に執着していないか?」と問いかけ、「企業全体の利益は何か?」と考えることが重要。

間接部門にいる人がよく耳にするであろう「私たちは他と違うから・・・」「それ、私たちの事業部にメリットある?」これらもサイロ化のひとつだと私は思う。

また、シカゴ警察の別個で存在しているデータを繋ぎ合わせて、新たな気付きを得た事例は大変参考になった。各データを持っている組織はデータの価値に気づいていなくても繋ぎ合わせることで価値が生まれる。DX推進部署含め、間接部門は各部門を繋ぎ合わせる使命も持っている。

サイロ化を打破して、組織として成果を上げたい

サイロ化の主な要因

  • 文化人類学的には独自のルールや慣習を作り、周囲との間に生まれる見えない境界
  • 組織論的には人員が150人(ダンバー数)を超えると安定的な対人関係の維持が困難になり、組織の分割が必要になる

メタ(旧フェイスブック)はソニーマイクロソフトがサイロ化に陥る姿を見て、我々はこうはならないと決意し、人類学的な視点を取り入れた対策でサイロ化を防いでいる。

また、アメリカの病院では医師目線の分割から消費者目線の分割に切り替えることでサイロ化を防ぐことに成功している。

メタ(旧フェイスブック):横串人材の創出と専門外に挑戦する仕組みの導入

メタの幹部社員はコンピュータ技術者の数が150人(ダンバー数)という閾値を越えた時、サイロ化を回避する策として中途採用を含む全ての新入社員に同じ研修を受講させた。

研修でメタが大事にする文化(率先して課題を解決する)を身につけてもらうと同時に同じチームのメンバーとの絆を構築する。そうすることで、早い段階でメタの戦力になるだけでなく、縦の関係にあるプロジェクトチーム間に橋をかけるように横串の存在になることができる。

また定期的に他の部署に強制的に異動させる制度や専門外の課題に集中的に取り組むイベントを開催することで、他のグループがしていることやメタの全体像を認識できるようにした。

これらは従業員の所属する各組織ではなく、メタへの帰属意識を高めることに成功した。

病院の専門を廃止:患者目線で医者の専門をクロスオーバー

私の父が心臓の僧帽弁の手術をすることになったのです。(中略)すばらしい実績については知っていましたが共感力がないと聞いたので選びませんでした。

このアメリカの病院には各科の一流の専門医(心臓外科医、心臓内科医など)が集まっていた。しかし、患者は「心臓外科医に会いたい」ではなく「胸が痛い」と言う。つまり、○○科で医療を選んでいない。実際、私が病院に行く際も症状をネットで調べて受診する科を探しているが、正しいかも分からないので、病院で割り振ってくれるならありがたいと思う。

また、医療が発達するにつれて外科や内科などの境界はあいまいになり、重複が生じていた。

頸動脈ステント処置を手掛ける部門が五つもあった。心臓外科、神経科、神経外科、神経放射線科、そして血管外科だ。

そこで院長は、患者が心身の不調を語る身体の部位や漠然とした病名で組織を構成することにした。

その結果、「皮膚科・形成外科センター」「癌センター」などのセンターが設立された。そして、統合された専門医たちが共通の身体の部位に対する知見を共有することで医療はより良くなった。

私の学び

部門同士の橋渡しになることができる人材を各部門に10%ほど作ることは有効だと改めて認識できた。その人たちが全体最適に物事を捉え、各部門に展開することで結果的にサイロ化を防ぐことができる。

またアメリカの病院のように顧客視点で医療サービスを捉えるのは非常に良い取り組み。製造業でも自社の製品軸ではなく、自動車や環境保護製品といった顧客が使用する最終製品を軸にすることで異なる製造部門の人々が共通の課題に取り組み、サイロ化を防ぐことができる。

横串人材との交流維持、最終製品視点での自社製品の捉え直しにどのようなメリットがあるのかをイメージできるようにして、会社の仕組みとして定着させていくことが今後の課題。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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