社内DXに取り組む私が読んだ本を紹介するブログ

30代男性がDX推進に苦戦する中でヒントを得ようと読んだ本の学びをシェアします。

【書評】サイロ・エフェクト

訪問いただきありがとうございます!

この本は以下のような課題をお持ちの方にオススメです。

  • 全体最適の必要性が分かる具体的な事例を探している
  • サイロ化を打破して、組織として成果を上げたい

これらの課題について、本書の概要と社内DXに取り組んでいる私の学びを書きます。

全体最適の必要性が分かる具体的な事例を探している

本書には、サイロ化による問題とサイロ化を克服して成果を出した実例が4つずつ紹介されています。

まずサイロ化とは組織間の情報や業務のプロセスが繋がっておらず、別個に独立して存在している状態のことです。農場にそびえ立つサイロのようだと捉えてサイロ化と呼んでいます。

現代は、職業の専門家や技術の高度化が進んでいるため分業は不可欠になっているため、サイロ化は避けることができません。

一方で、サイロ化が蔓延り機能不全となった組織はサイロを使いこなした組織に敗れてしまいます。

ソニーのサイロ化:同時期に発表された同じ機能の互換性の無い3つの商品

1990年代、ソニーは大規模化と複雑化という問題を解決する最適な手法として会社を独立した専門家集団(サイロ)に分割することを実施した。

当時、巨大企業は単一の事業体ではなく、独立した事業ユニットを作り透明性や効率性を高め、責任の所在を明らかにした方が良いという考えが普及していた。実際、改革初期のソニーでは、各組織が収益に責任を持って努力することで大きな改善効果を得られていた。

しかし、次第に各組織が収益の良さを争うようになり、他の部門とのアイデア交流、優秀な社員の他部門への異動を避けるようになった。すぐに利益を生まない長期投資も避けるようになり、成長に必要なリスクを控えるようになってしまった。

その結果、音楽体験がデジタルに移行し始めた1990年代初頭、ソニーは各事業部門が独自のアイデアを検討し、同じ機能を持つ互換性の無い3つの商品を発表した。一方、Appleではスティーブ・ジョブズのワンマン体制のもとiPodが発表され、Appleが業界首位の座を瞬く間に獲得した。

殺人予報地図の作成:各部門の持つデータをクロスする

アメリカのシカゴはギャングが多く殺人が悲劇的なほどに多い場所であった。そこに他業界で成功を納めた1人の人物が己の正義感に突き動かされて警察官となった。

シカゴもソニーの例と同様に組織間でデータを秘匿していたが、データを一元管理することを根気強く働きかけた。集めたデータを紐づけると、ギャングの移動情報、地理的情報、気温などから殺人が起きる可能性の高い場所が分かるようになりました。

その結果、シカゴの殺人事件数は劇的に改善したのです。

私の学び

大企業の場合、見るべき範囲が膨大になってしまうため、単一の企業運営ではなく各事業毎に責任を持たせることは有効。

お互いに競争心を持って切磋琢磨し、業績を高める正のスパイラルを生み出せる可能性もある。

一方で、ソニーのように他の部門に負けたくないからと足を引っ張り合う負のスパイラルに陥る可能性もある。

ここで考えたいことは「戦う相手は一体誰なのか?」ということです。企業が戦う相手は他の企業であって、他の部門ではありません。他の部門と争っていては同じ企業とは言えないと思います。

経営層、各部門の責任者、そして担当者のそれぞれが「各部門の利益に執着していないか?」と問いかけ、「企業全体の利益は何か?」と考えることが重要。

間接部門にいる人がよく耳にするであろう「私たちは他と違うから・・・」「それ、私たちの事業部にメリットある?」これらもサイロ化のひとつだと私は思う。

また、シカゴ警察の別個で存在しているデータを繋ぎ合わせて、新たな気付きを得た事例は大変参考になった。各データを持っている組織はデータの価値に気づいていなくても繋ぎ合わせることで価値が生まれる。DX推進部署含め、間接部門は各部門を繋ぎ合わせる使命も持っている。

サイロ化を打破して、組織として成果を上げたい

サイロ化の主な要因

  • 文化人類学的には独自のルールや慣習を作り、周囲との間に生まれる見えない境界
  • 組織論的には人員が150人(ダンバー数)を超えると安定的な対人関係の維持が困難になり、組織の分割が必要になる

メタ(旧フェイスブック)はソニーマイクロソフトがサイロ化に陥る姿を見て、我々はこうはならないと決意し、人類学的な視点を取り入れた対策でサイロ化を防いでいる。

また、アメリカの病院では医師目線の分割から消費者目線の分割に切り替えることでサイロ化を防ぐことに成功している。

メタ(旧フェイスブック):横串人材の創出と専門外に挑戦する仕組みの導入

メタの幹部社員はコンピュータ技術者の数が150人(ダンバー数)という閾値を越えた時、サイロ化を回避する策として中途採用を含む全ての新入社員に同じ研修を受講させた。

研修でメタが大事にする文化(率先して課題を解決する)を身につけてもらうと同時に同じチームのメンバーとの絆を構築する。そうすることで、早い段階でメタの戦力になるだけでなく、縦の関係にあるプロジェクトチーム間に橋をかけるように横串の存在になることができる。

また定期的に他の部署に強制的に異動させる制度や専門外の課題に集中的に取り組むイベントを開催することで、他のグループがしていることやメタの全体像を認識できるようにした。

これらは従業員の所属する各組織ではなく、メタへの帰属意識を高めることに成功した。

病院の専門を廃止:患者目線で医者の専門をクロスオーバー

私の父が心臓の僧帽弁の手術をすることになったのです。(中略)すばらしい実績については知っていましたが共感力がないと聞いたので選びませんでした。

このアメリカの病院には各科の一流の専門医(心臓外科医、心臓内科医など)が集まっていた。しかし、患者は「心臓外科医に会いたい」ではなく「胸が痛い」と言う。つまり、○○科で医療を選んでいない。実際、私が病院に行く際も症状をネットで調べて受診する科を探しているが、正しいかも分からないので、病院で割り振ってくれるならありがたいと思う。

また、医療が発達するにつれて外科や内科などの境界はあいまいになり、重複が生じていた。

頸動脈ステント処置を手掛ける部門が五つもあった。心臓外科、神経科、神経外科、神経放射線科、そして血管外科だ。

そこで院長は、患者が心身の不調を語る身体の部位や漠然とした病名で組織を構成することにした。

その結果、「皮膚科・形成外科センター」「癌センター」などのセンターが設立された。そして、統合された専門医たちが共通の身体の部位に対する知見を共有することで医療はより良くなった。

私の学び

部門同士の橋渡しになることができる人材を各部門に10%ほど作ることは有効だと改めて認識できた。その人たちが全体最適に物事を捉え、各部門に展開することで結果的にサイロ化を防ぐことができる。

またアメリカの病院のように顧客視点で医療サービスを捉えるのは非常に良い取り組み。製造業でも自社の製品軸ではなく、自動車や環境保護製品といった顧客が使用する最終製品を軸にすることで異なる製造部門の人々が共通の課題に取り組み、サイロ化を防ぐことができる。

横串人材との交流維持、最終製品視点での自社製品の捉え直しにどのようなメリットがあるのかをイメージできるようにして、会社の仕組みとして定着させていくことが今後の課題。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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